私が皮膚科医になり最初に教えてもらったこと、さらには参加する学会や勉強会で推奨されるスキンケアは「とにかく保湿」でした。
スキンケアの基本
肌荒れをおこしている人にも、敏感肌の人にも、当然のように保湿・保湿・保湿!!
保険で処方できる薬でも保湿剤がありますので、それを多くの人に処方していたわけです。
それでも、肌荒れの方って良くならない……
疑問を感じながらも、保湿剤、そして症状が悪化すればステロイド外用薬を処方することが一般的な処方でした。
そんな中私のスキンケアに対する概念をガラリと変えた治療がトレチノインを使用したスキンケア理論でした。(現在、当院ではリペア治療とよんでいます)
この治療の一番の効果である美白以外の効果として、肌の再生という予想外の結果を目の当たりにしました。
なぜリペア治療で、肌が再生するのか?
その答えを端的に表すと「スパルタ教育で叩き直す」という表現がぴったりなのではないかと思います。
はじめに、美白の治療のために、リペア治療を行うのですが、治療が終わった人の肌(実際に私自身も体感しましたが)が、健康でハリのある、そしてつややかな肌になっている…その変化が一番の驚いた点でもあります。
あまりにも、肌の調子が一様に良くなるのでアトピー性皮膚炎・酒さ様皮膚炎・肌荒れの方にも協力していただき、美白ではなく、肌荒れ治療も行いました。
結果は大成功! 皆さんの肌荒れが劇的に改善したのです。
中には、ステロイドや、プロトピックという薬を顔の肌荒れに10年間も使ってきたのに全く不要になって笑顔でクリニックを卒業された方もいます。
この治療を通して、私は保湿&保湿で甘やかされた肌を、保湿を抜きにしてむしろ乾燥気味にしながらターンオーバーを正しいサイクルに戻し、健康な肌を取り戻す……
そんな治療が肌荒れ、敏感肌の方には本当は必要なのではないかという考えに至るようになりました。
・保湿という常識を見直す。
・保湿によってかえって乾燥・くすみ・肌荒れを生じている。
スパルタ教育の第一歩、脱保湿
乾燥肌の方、冬になると粉が吹くのよ~ という方!
あれこれ保湿剤を重ねたり、冬の乾燥に特別アイテムをプラスしているかもしれませんが…それが実は逆効果なのです。
そもそも、なぜ冬になると乾燥して粉が吹くのでしょう?
外気が乾燥しているから…というのは確かにその通りですが、人の体には恒常性があるので自ら潤う力はあるはずです。
乾燥する理由を考えるうえで大事なってくるポイントが、「生きている細胞」と「死んでいる細胞」の違いです!
皮膚の構造は、外層から
・表皮
・真皮
・皮下脂肪
となっています。
このうち
「角層」:死んでいる細胞 → 栄養をもらえない垢となって剥がれ落ちる部分
「表皮・真皮・皮下脂肪」:生きている細胞 → 栄養たっぷり。水分もたっぷり。潤っている
魚に例えると、角層は干物のようなものです。 その他の細胞は 生きているお魚… と考えると死んでいる細胞である角層が厚いほど、干物のようにカサカサしますし手触りも悪いことがご理解いただけるでしょうか…
死んでいる細胞なので、外気が乾燥すると干物度合いが強くなります。(何もつけていない状態)
外側から水分を与えると水分を吸収してしっとりした感じになります。(化粧水や、乳液でたっぷり潤している状態)
さらに、死んでいる細胞が厚ければ厚いほど、何も塗らなければ乾燥し、つければしっとりするというこの傾向は強くなります。
とすると、死んでいる細胞(角層)が少なければ乾燥とか手触りって解決するのでは…と仮説が立てられますよね。
まさにその通りで、死んでいる細胞のすぐ下には、生きている細胞があります。生きている細胞から、若干うるおいのおすそ分けをもらうことができ、乾燥せずに済みますし、乾燥していなければ手触りも滑らかになります。
つまり、角層が薄いほど乾燥しらずの手触りの良い肌になる!と結論付けたいと思います。
保湿をしすぎると、返って角層は厚くなる
先ほどの話では、角層が薄い方が良いことがわかりました。
では、どうすれば角層が薄くなるか…ですが、この点は、実は保湿をしすぎないという事が大事といえます。
もともと、人の皮膚では角層が自然にはがれるようにできています。
角層が自然にはがれるためには、角層の細胞同士をくっつけている接着剤のようなものが、力を失って接着剤が無くなってくれればいいわけで、これに必要な条件が適度な乾燥です。
もともと、健康な肌のためには若干の乾燥は必要なのですね。
この原則を無視すると
肌が乾燥する → 保湿をたっぷりする → 角質が厚くなる → 乾燥して粉が吹く原因になる → ますます保湿する → 角質が厚くなる…
の繰り返しに陥ってしまい、保湿をしすぎる=ますます乾燥する という構図ができ上がります。
くすみの原因は角質だった!?
角質というのは、そもそも半透明な細胞です。
半透明なものが1層しかなければきれいにしたが透けて見えますが、何層にも重なるとくすんで濁ってしまいます。
クリアファイルに例えるとわかりやすいです。
クリアファイルが1枚なら下の文字はきれいに見えます
クリアファイルを何層にも重ねると、濁って見えますよね。これがくすみになります。
保湿剤をあれこれつけると、肌荒れの原因に
そして最後に、肌荒れ。
保湿剤はその構造上、乳化剤、界面活性剤、保存料…など多数の添加物が含まれていることが多く、あれこれつけることによって肌荒れの原因となります。
薬の処方の際も、一番かぶれにくいものはべたべたした軟膏で、クリーム基材になるとかぶれることもあります。
また、薬として処方しているヒルドイドソフトも、基材に含まれている成分でかぶれを生じることが学会でも発表されています。(ヒルドイドローションの方がかぶれない)
脱・保湿、脱・摩擦こそが肌には必要
肌をスパルタ教育するためには、必要な薬も追加しなければならないのですが、その前にまずは基本として、今までの保湿重視のスキンケアから、「脱保湿」へシフトしていく必要があります。
肌の再生のためには、今まで与えすぎの基礎化粧品から、保湿を引き算しなければならない。そんな想いで、オリジナルのスキンケアアイテムは「subtract サブトラクト」と名付けました。
引き算という意味です。
余分な成分を引き算する。余分な保湿を引き算する。そして、シミの原因ともなる摩擦も引き算する。
こういったコンセプトで作った化粧品です。
ですから、べっとりするような保湿剤ではなく、さらりとした使い心地です。
あれこれ何度も重ねるのではなく、必要最低限のアイテム使用だけで十分です。
肌に摩擦を起こさないよう、伸びの良さを重視しています。
余分な成分は入っていません。もちろん、無香料・無着色です。