ボトックスとは?意外と知らない基礎知識

ボトックスとは

みなさんこんにちは👩‍⚕️

今回はボトックスの基本編についてお話していこうと思います。

ボトックスとは?

ボトックスとは、ボツリヌストキシンAという製品のことをいいます。

実は「ボツリヌストキシン」にはAの他にBやE、Fなど色々な種類があるのですが、人体に使えるのはボツリヌストキシンAとBだけです。

その中でも「B」というのは薬としては存在していますが、ほとんど使われることはありません。

理由は、使用する単位数(使用する量)がAよりも50倍程必要だったり、注射を打ってからの効果の持続時間も1ヵ月程と短いからです。

ボツリヌストキシンBを使用する場合は、ボツリヌストキシンAを使用しても効果がなくなってしまったり、Aでは効果がない人の場合にのみ使用をするので、一般的にはAしか使わないと思っておいてください。

今日は「ボツリヌストキシンA」について焦点を絞ってお伝えしていきます。

「ボトックス」という名前のお薬についてですが、実は「サランラップ」のような商品名のイメージです。アラガン社の商品になっています。

一般名称としての「サランラップ」は食品用ラップというのと同じく、ボツリヌストキシンというのが一般名称です。商品としてはアラガン社が発明したボトックスが先発薬品で厚生労働省の承認もあり、アラガンジャパンが流通させているものが自費で主に使われている薬です。

他には、グラクソスミスクライン社が日本で流通させているものがあります。

製造自体はアメリカのアラガン社が作っているので自費の薬とまったく同じなのですが、グラクソスミスクライン社の方は20年程前から保険適用もあり、さまざまな病気でも使用される薬になります。

中身は自費の薬とまったく同じです。

ボツリヌストキシンの種類

他に聞いたことのある名前で「ニューロノックス」があがるかと思いますが、これは韓国の会社の製品でボトックスと全く同じ成分になるためジェネリックという解釈をして良いと思いますが、こちらは日本での承認というのはありません。

またディスポートというのはヨーロッパなどで使用されているお薬ですが、日本ではほとんど使われることはないのではないかなという印象です。

ボコーチュア(旧ゼオミン)やコアトックスというものもありこれらはボツリヌストキシンAの中でも最近新しく出てきているタイプで進化形と言われているものです。

『何が進化してるか』というと後々お伝えしますが、ボツリヌストキシンに対して『自分の体でこれは敵だ!!』と認識をして抗体を作り効かなくなってしまうのを、ボコーチュアやコアトックスでは起こりにくいとされています。

おさらいになりますが、ボトックスとは商品名で一般名詞はボツリヌストキシンと言い、その中でもボツリヌストキシンのAを私たちは使用しています。

ボトックスやニューロノックス、ボコーチュア、コアトックス、そして日本ではあまり流通してないディスポートなどと色々な名前がありますが、大まかに言うと似ているものということです。

ボツリヌストキシンは毒なの?

ボトックスとは
このボトックスの『トックス』とは実は毒素になります。

安全なのかということが気になるかと思いますが、ボトックスは非常に安全な薬です。

なぜかというとボトックスというのはボツリヌス菌が作る毒素だけを抽出して薬にしているからです。毒素だけを抽出して薬にしているので、毒素の量というのは薬にした段階で量や強さには変化が起きません。この量だと安全に使える量、致死量ではないというのがしっかりわかって使うことができるため安全なのです。

患者様から「ボツリヌス菌で死亡事故などあるから、この注射も危ないんじゃないですか」と聞かれることがあるのですが、まったく考え方が違います。

私たちの使っている、ボトックス、ボツリヌストキシンというのは安全なものですが、ボツリヌス菌が混入している食べ物を食べてしまうと、それは食中毒となりますし死亡例も出ているものもありますので、ボツリヌス菌が存在しているものは危険というふうに思っておいてください。

実際に1984年では熊本県でカラシ蓮根の食中毒で9名の方が亡くなっていますし、最近では2020年に生後5カ月の乳児でハチミツのボツリヌス菌で亡くなっている方もいます。ボツリヌス菌が存在しているとそうなるリスクがありますので私たちの使っているものとは全く別の物になります。

病院で使用しているものは、菌は一切入っておらず、毒素だけを安全な薬にして使用しているので心配ないということをご理解ください。

ボツリヌストキシンの安全性がわかったところで、中和抗体が身体の中でできると効果がなくなるという注意点について話していきましょう。

ボツリヌストキシンと中和抗体

ボツリヌストキシンには色々な種類があるのは何故かということを最初にお伝えしました。

そして2つ目にボツリヌストキシンは毒ではあるんだけど、安全なのは何故かということをお伝えしました。

3つ目はボツリヌストキシンは頻繁に打つと、中和抗体ができてしまい効かなくなるので気をつけましょうということです。この3つが分かるとボツリヌストキシンの治療をどのように受けたら良いのかを納得できるかと思います。

3つ目のボツリヌストキシンの中和抗体というのは、同じ場所に何回も治療する場合には最低3ヵ月は間隔をあけた方がいいと言われているということです。

実際に保険の診療でも4ヵ月をあけるようにと言われています。その理由が何度も何度も頻回に注射を打つと体の中でボツリヌストキシンに対して中和する抗体ができてしまい注射した途端に中和する抗体ができ始め、注射を打っても効かないという状況になってしまうからです。そのため4ヵ月を開けるようにと国の方で定めています。

しかし、海外の論文で最近言われているのは2240人に注射したけれどもそのうちの11人に抗体が出てき、抗体ができた11人のうちをボツリヌストキシンが効かなくなったのは3人ということです。率としては100人に打って1人も出ない程の確率になります。

また、眉間ボトックスでは0.28%の人に抗体がみられたという報告もあります。

中和抗体ができる頻度は数百人に打って1人いるかどうかなので、そこまで高い頻度ではないです。

しかし、効かなくなってしまうとボツリヌストキシン以外でいい薬がありません。

ですので、効かなくならないように最低でも3ヵ月、4ヵ月の期間をあけ中和抗体ができないように配慮することが大切です。

始めにお伝えしたボコーチュアやコアトックスは新しいタイプのボツリヌストキシンです。中和抗体ができにくいと言われているのですが、日本の医療現場では厚生労働省が承認を出しているアラガン社のボトックスというのが一番安全に使えるというのがはっきりわかっています。

当院では、現在はアラガン社のボトックスを準備しています。

またボツリヌストキシンは強く打ちすぎると中和する薬が存在しないため、効きすぎて顔に左右差が生じたり、眼瞼下垂になってしまう可能性もあります。そのため、少しずつ打っていき、2週間後に追加で気になる部分に打つ形で進めていく方法が安全です。

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